映画レビュー『BAD TIMES AT THE EL ROYALE エルロワイヤル』あらすじ【ネタバレあり】クリス・ヘムズワース

　BAD TIMES AT THE EL ROYALE　 

『アベンジャーズ』シリーズのソー役クリス・ヘムズワースをはじめとして、アカデミー賞俳優のジェフ・ブリッジス、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のダコタ・ジョンソン、テレビドラマシリーズ『MAD MEN』のジョン・ハムなど名だたる俳優陣を起用したクライム・エンターテインメント作品『BAD TIMES AT THE EL ROYALE』は、『キャビン』を手がけたドリュー・ゴダード監督の新作です。

様々な事情を抱えたホテルの宿泊客を中心として、次々と明らかになる謎、そしてどんどん変わっていく素早い展開が見る人を飽きさせません。

　あらすじ　

エルロワイヤルはカリフォルニア州とネヴァダ州の境に建つホテルである。

その1室にやってきた一人の男が、おもむろに床板をはがし始める。

男はホテルの床下に持ってきた赤いボストンバッグを隠すと、床板を元通りにし、その後、誰かを待っているようだった。

待ち続ける男。やがて、来訪者が。

ドアののぞき穴を確認してからドアを開け、来訪者を招き入れると、突然の銃声。

男は来訪者に背後から撃たれて死亡した。

時は過ぎ、栄えていたホテル・エルロワイヤルはすっかり寂れてしまっていた。

宿泊客としてやってきたのは、4人。

1人目はララミー・サリバンというカルフーン電機の営業の男。掃除機を売っているという。（1号室）

2人目はインディアナ州の神父ダニエル・フリン。（4号室）

3人目が黒人の女性シンガー、ダリーン。（5号室）

最後にやってきた女は、まるでヒッピーのような恰好をしていて、宿泊名簿に書いた名前は「Screw You」意味は「くたばれ」だった。（7号室）

エルロワイヤルはカリフォルニア州とネヴァダ州にまたがって建っているため、ホテルの部屋もカルフォルニアとネヴァダに分かれている。

カリフォルニア側が1ドル高いらしい。

エルロワイヤルのフロント、掃除、バーテンなどすべての業務はマイルズという従業員がたった一人で行っていた。

1号室に入ったララミーは部屋の中から盗聴器を探している。電話の中、家具の中や裏、壁、電気、様々なところから発見したのは数十にも及ぶ盗聴器だった。

彼は実は捜査官で、ある目的をもってこのホテルを調べにきたようだ。

ララミーはフロントに誰もいないことを確認すると、どこかのカギをキーボックスから取り、フロントの奥、バックヤードに入っていく。

従業員のマイルズは眠っていてララミーの侵入に気づかない。

ララミーが更に奥に入っていくと、そこはホテルの部屋の裏側だった。

部屋の鏡がマジックミラーになっており、どの部屋の中も丸見え。しかもスイッチを切り替えることにより、音声もきくこともできる。

カメラもあり、録画装置もセッティングされているという状態だった。

裏側からララミーが各部屋をのぞくと、神父はなぜか床板をはがしているし、ダリーンはメトロノームを使って歌の練習をしている。

そして、あのヒッピー女はなんと少女を椅子に縄で縛り付け監禁しているではないか。

ララミーは外の公衆電話からワシントンD.C.に電話をかける。

「ブロードベック捜査官です。装置回収の際に別の盗聴器を見つけました。・・・実は一つ問題が・・・」

ララミーの本名はブロードベックだった。誘拐の件は手を出すなとワシントンから指示されたが、彼は放っておけず、任務外ではあるが、誘拐された少女を救出することにする。

銃を持ってヒッピー女の部屋へ。

だが、逆に女に撃たれて死亡してしまう。

撃った女はエミリー、そして監禁されていたのはエミリーの妹のロージー（ローズ）であった。

ロージーはビリー・リーという新興宗教の教祖のような男に洗脳されていて、その洗脳を解くため、エミリーはビリー・リーの元からロージーを奪って逃げてきたのだった。

ララミーが射殺された隙に、ロージーはビリー・リーに電話をして居場所を知らせてしまう。ビリー・リーはすぐに迎えに行くと言い電話を切った。

一方、ダリーンの部屋を訪れたのは隣の部屋の神父だった。

おごるからラウンジで一緒に食事をしてほしい、という神父にダリーンはついていく。

ラウンジには誰もいないが食べ物の自動販売機が置いてあり、酒は自分で勝手につげるので、神父はお酒を飲む。

神父はダリーンにも酒をすすめ、ダリーンの酒にこっそり睡眠薬を入れる。

と、神父を後ろからダリーンがボトルで殴りつけ、神父は倒れた。

ダリーンは以前コーラス歌手で、あるプロデューサーに「1年俺に君を預ければベガスでリードボーカルで歌えるスターにしてやる」と言われ、だまされた経験があった。

この経験から、ダリーンはだまそうとする男を見抜くことができるようになったのだ。神父が何かを企んでいることを察し、先手を打ったというわけだった。

逃げようとするダリーンだったが、その時、ララミーがエミリーに射殺されるところを偶然にも目撃してしまう。

ララミーの死体から銃と車のブースターを奪うと、ダリーンはララミーの車へ。

その車で逃げようと試みるが、エンジンがなかなかかからない。

そこに、頭から血を流した神父がやってくる。

神父はダリーンに薬を盛ろうとしたことを謝罪し、事情を話し始める。

フリン神父は神父なんかではなかった。

彼はドナルド・オケリー。刑務所で15年服役し、その間に痴ほう症になってしまった。

服役する前に弟ともう一人との三人で現金輸送車を襲い大金を強奪したが、もう一人の男に裏切られ弟が殺されたのだという。

その時、弟がお金をこのエルロワイヤルの一室の床下に隠したのだが、痴ほう症のために4号室か5号室か思い出すことができなかった。

そこで4号室を調べてみたが金は見つからない。なので、ダリーンのいる5号室をこっそり調べたかったのだという。

神父は言った。「私は痴ほう症のため先は短い。だから、ダリーン、君に金を半分やるから、部屋の床下から金を取り出す協力をしてほしい」

この話が真実かどうかはわからなかったが、どうせこの先明るい未来もないダリーンは神父に協力してみることにした。

ララミーが射殺された時、裏側ののぞき通路にいたホテルの従業員マイルズは、割れたガラス片で顔に重傷を負っていた。

その時、マイルズと共にいたフリン神父は盗撮フィルムを発見する。

それは政治的重要人物の不倫情事ビデオで、売れば莫大なお金を生むであろうお宝フィルムであった。

エルロワイヤルは要人達のこのようなスキャンダルを盗撮し、政治利用する組織の元で運営されているらしい。

それらのフィルムの撮影や送付はマイルズが担当していたのだが、ある要人はとてもマイルズに優しかったために、マイルズはその人物のフィルムを送らず、情事は無かったと上層部に報告し、フィルムを隠していたのだ。

ダリーンの協力で現金の入ったボストンバッグを床下から取り出し、ほっとした神父だったが、そこにビリー・リーの一味が現れ、宿泊客は全員縛られ、神父の持っていた金もフィルムも取り上げられてしまう。

　ネタバレ　1/2　

※以下はネタバレとなりますので、読みたくない方はここまでで。

ネタバレは2段階設定してありますので、結末までは知りたくないけど、もう少し読みたい方はお進み下さい。

ビリー・リーはエミリーとマイルズに赤か黒か賭けさせルーレットを回す。

結果は黒。赤を選んだエミリーを射殺するビリー・リー。

ロージーは黙って姉が死んでいくのを見つめていた。

「次は誰にする？」と、ビリー・リー。

大金の出所と本名を聞かれた神父だったが、痴ほう症のため名前を答えられない。

色を選べと神父に言い、ルーレットを回すビリー・リーに、突然神父が体当たり。

神父とビリー・リーはもみ合いになる。

ダリーンがマイルズに助けるよう促すが、マイルズは「もう、これ以上殺せない」と言う。

「何人殺したの？」と聞くダリーンにマイルズが返した答えは「123人」だった。

マイルズは戦争で多くの命を奪ってしまったことで心を病んでいた。

懺悔して神父に許しを請いたいと強く願っていたが、神父が偽物だったことに落胆していたのだ。

「無理だ。もう殺せない」首を振るマイルズに、ダリーンは言う。

「マイルズ、いいのよ。もう殺さなくていい」

　ネタバレ　2/2　

※以下はネタバレとなり、結末を含みますので、読みたくない方はここまでで。

だが、神父が殺されそうになった瞬間、マイルズは銃を構えていた。

マイルズはビリー・リーを撃ち、他のビリー・リー一味も撃ち殺していく。

死んだビリー・リーにすがって無くロージーに近づき「アイム・ソーリー」と言ったマイルズの腹をナイフで刺したのはロージーだった。

そのロージーを神父が射殺。

腹を刺され死にゆくマイルズを救ってあげてというダリーンに、神父は私は本物の神父だと嘘をつき、マイルズの懺悔を聞く。

「僕は罪を犯しました。数えきれないほど殺しました。すみません神父様」

「許しを与える、マイルズ・ミラー。汝を許す」

それを聞いて、安心したように息を引き取るマイルズ。

たった二人だけ生き残ったダリーンと神父は散らばったお金をボストンバッグに詰め、フィルムを燃やすと、ホテルを後にした。

リノの町。

小さなカジノに併設された小さなステージ。

「今夜の特別ゲストはこの人」

ステージに登場したのはダリーンだった。

1人の老人が客席に座っている。その老人はあの偽神父、ドナルドであった。

　推測と感想　

※ネタバレを含みます。

ここからは推測になりますが、

あの大金でドナルドはリノに小さいカジノを買い、オーナーとなった、そして、ダリーンはソロ歌手として成功、地位をつかみ、ドナルドの小さいカジノにゲストとして登場したのではないか、と思われます。

この二人だけは幸せになったわけです。

考えてみれば、マイルズは多くの人を殺したとはいえ、それは戦争だったのだから仕方ないことでもありますが、まぁ、罪の多い人生だったのは間違いないし、心を病んでもいたようだから、最後に懺悔することができ、安らかな死を迎えたので、マイルズにとっては受け入れがたい死ではなかったかもしれないですね。

エミリーはララミーを殺してしまったし、ロージーはマイルズを殺し、それ以前にも男を刺し殺しているので、この二人の死についても仕方ない結末だったという感があります。

ですが、ララミーはロージーを助けようとしただけで殺されてしまったわけで、彼が捜査官として正義感を持って行動したのは立派だったし、それが全く報われずに無念の死となってしまったのは可哀そうでした。

そして、最終的に登場して、圧倒的な存在感を残したビリー・リー。

ロージーを虜にしたカリスマ感が光っていました。

全ての根源がこのビリー・リーにあって、ビリー・リーの存在によって、このエルロワイヤルにおける凄惨な事件が引き起こされたことは間違いないのですが、映画の中ではそれぞれの登場人物の事情とうまく絡み合って、登場人物がそれぞれ個性的に描かれているのが面白いと思います。

1つの事件を複数の登場人物の視点から描いているので、謎が少しずつ明かされていきます。

次々起こる事件とハプニング、明かされる一人一人の事情。

テンポが良くて観客を飽きさせません。

2回見たけれど、飽きることなく楽しむことができました。

イチオシ、おすすめの映画です！