2019/10/16

映画『ジョーカー』で見るべきポイントと歴代ジョーカー

 ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞の映画『ジョーカー』 




日本で2019年10月4日に公開された映画『ジョーカー』は大ヒットを記録しています。
アカデミー賞の呼び声も高いこの映画をもっと楽しむために知っておきたいポイントをまとめました。

 ジョーカーとは誰なのか 


ジョーカーはバットマンに登場するヴィラン(悪役)です。
バットマンのヴィランの中でも最も有名で人気のあるキャラクターで、その残忍性と気味悪い笑いが特徴の悪の象徴ともいえる存在。

顔はピエロのよう、髪は緑、服装は派手な紫(映画の中では赤ですが)。
とても特徴的な容姿で、頭が良く、バットマンを翻弄し、人々を惹きつけます。

ジョーカーは映画やドラマで何人もの俳優がその役を演じてきました。

 歴代ジョーカー 


映画『バットマン』 ジョーカー役ジャック・ニコルソン


アメリカンコミック版のジョーカーを体現したようなジャック・ニコルソンの演技は完璧なサイコで、まさに悪の権化『ジョーカー』です。

このジョーカーは白塗りのピエロメイクではなく、原作通り、バットマンに化学薬品の中に落とされたため、皮膚が白くなってしまったという設定です。
素顔を隠すためにファンデーションを塗って肌色にして変装するシーンもあります。

組織のボスを殺して自分がボスに成り上がり、バットマンの彼女まで無理やり奪おうとする、正に悪の極みとしてのジョーカーをジャック・ニコルソンが実に意気揚々と演じている、歴代ジョーカーの中でもファンが多いジョーカーになっています。



映画『ダークナイト』ジョーカー役ヒース・レジャー



ジョーカーをヒース・レジャー抜きには絶対に語ることはできません。

ダークナイトはバットマンの映画ではなく、ジョーカーのための映画ではないかと思わされるほどヒースの演技は神がかったものでした。

ヒースはこの撮影後に死亡しています。
全てをこのジョーカーに捧げたともいえるヒースの演技は最早演技のレベルを超え、彼そのものがジョーカー。
ジョーカーとして生きたヒースの遺作『ダークナイト』はジョーカーを知るためには必見の作品です。

少なくともダークナイトを見てから、映画『ジョーカー』を見に行くことをおすすめします。

自分の口が裂けている理由をジョーカーはこの映画の中で2回話していますが、どちらも嘘。
ジョーカーの過去は嘘と妄想で、本当のところは不明なのです。
このポイントは映画『ジョーカー』を見るときの下地になりますので、要チェックです。



映画『スーサイドスクワッド』ジョーカー役ジャレッド・レト



歴代ジョーカーの中でも男前度がナンバーワンのジャレッド・レト。
モデルもしているジャレッドがジョーカーを演じるには容姿が良いのがかえって邪魔をしてしまい、かなり大変だったようです。

歯に被せ物をしたり、口が裂けたメイクをしていなかったり、今までのジョーカーとは異質なジョーカーを作り上げました。

ヒースのジョーカーと比較されることも多く、ヒースファンからは評価が低いのですが、ジャレッド版ジョーカーはハーレイ・クインの相手役として輝き、女性の心をがっちりと捉え、ジョーカーの世界に引き込むには十分な、魅力溢れるジョーカーであったと太鼓判を押したいと思います。


映画『ジョーカー』ジョーカー役ホアキン・フェニックス



そして、今回の映画で主役をつとめたホアキン・フェニックス。

アメコミの中の1人のヴィランが映画になることだけでも特異な事であるのに、ヴェネチア国際映画祭で最高賞受賞という快挙を成し遂げました。
アカデミー賞でも主演男優賞が有力視されています。

その演技力だけでほぼ全編を引っ張り、飽きさせません。
ジョーカーに感情移入させる細かい表現。
見る人の心を惹きつけて最後まで離しません。

狂気と悲しみ、障害と残虐性、社会と家族。
様々な問題提起の中でホアキン演じるアーサーがジョーカーとして花開く様は圧巻です。

歴代ジョーカーの中でも、この存在感は1位を争うレベルと言わざるを得ません。


ドラマ『ゴッサム』ジョーカー役キャメロン・モナハン




バットマンシリーズでドラマ化されたものが『ゴッサム』です。

バットマンであるブルース・ウェインが子どもだった時代を描いていくこのドラマですが、このドラマにも若きジョーカーが登場します。

演じるのはキャメロン・モナハン。
子どもの頃からサイコパスで悪人のジョーカーを若いながら、すごい迫力で演じています。

ジョーカーに興味があったら、ぜひこちらのドラマ『ゴッサム』を。
バットマンの世界観が深まると思います。


 映画『ジョーカー』と『タクシードライバー』『キング・オブ・コメディ』の関係性 


映画『ジョーカー』はロバート・デニーロという俳優とマーティン・スコセッシ監督抜きには語ることのできない映画です。

『タクシードライバー』と『キング・オブ・コメディ』はどちらも主演がロバート・デニーロ、監督がマーティン・スコセッシですが、映画『ジョーカー』はこの二つの映画をオマージュした作品であり、この二つの映画の影響をかなり受けている映画なのです。

映画『ジョーカー』にはロバート・デニーロが司会者役で出演しています。
そして、映画『ジョーカー』には二つの映画と同じシーンが登場するのです。

『タクシードライバー』でロバート・デニーロがソファに座り指を銃のように自分の頭にあてるシーンがありますが、これと同じシーンが映画『ジョーカー』にもあります。
ホアキン演じるアーサーがソファに座り、指を銃のようにして自分の頭を撃ち抜く真似をするシーンです。

『キング・オブ・コメディ』で妄想の激しいコメディアン志望のルパート・パプキンがオフィスの中で追いかけられるシーンがあります。
白いオフィスの通路の先に廊下があり、その廊下をパプキンが追いかけられて右へ行ったり左へ行ったりするシーンです。
映画『ジョーカー』ではラストのシーン、白い病院の廊下の突き当たりでアーサーが追いかけられて右へ行ったり左へ行ったりするのですが、正にこのシーンがキング・オブ・コメディにも登場していたのです。



 バットマンの世界観と

ブルース・ウェイン 



忘れてはいけないのが、このジョーカーはバットマンの世界に存在しているキャラクターだということです。

バットマンやジョーカーが住んでいる町は荒廃したゴッサム・シティ。

映画『ジョーカー』もまたゴッサムで起こった出来事であることに間違いはないのです。
そこにはバットマンも登場しています。
それが子どもの頃のバットマン、ブルース・ウェインです。

アーサーはブルースの父を自分の本当の父と思い込みますが、それは母の妄想でした。
アーサーは異母兄弟だと思ったブルースに会いに行きますが、これが未来のジョーカーとバットマンの初めての出会いとなりました。

映画『ジョーカー』はアーサーがジョーカーになっていく映画ですが、ここにもう1人誕生する人物がいたのです。
そうです。
ブルースがバットマンになった理由。
ブルースがバットマンとして誕生する瞬間がこの映画『ジョーカー』にもしっかり記録されていました。

それは、ブルースが両親と共に裏路地を歩き、ピエロの仮面をかぶった男に両親を殺されるシーンです。
ブルースの目の前で両親は倒れ、母親の首元のパールのネックレスが引きちぎられ、真珠の粒があたりに撒き散らされる、バットマン誕生において最も重要なポイントである、あのシーンです。

このシーンの裏ではアーサーが民衆のカリスマであるジョーカーとしてゴッサムに誕生しています。
一方ではジョーカーが生まれ、もう一方ではバットマンが生まれているという重要なシーンなのです。

正義のヒーローと悪のカリスマが同時に誕生するというこの演出。
バットマンファンにはたまらないエピソードなんです。


 これは普通の青年が社会によってジョーカーになった話ではない 



ごくごく普通の青年が社会によって散々な目に合わされ、遂にジョーカーになったと勘違いされている方が少なからずいらっしゃいますが、普通の青年はどんなに酷い目に合わされたところで悪のカリスマであるジョーカーになることなどできません。

ジョーカーはなるべくしてジョーカーになったのです。

元々の性質が開花した、閉じ込められていた本質が爆発したのであって、誰でもがジョーカーになれるわけではありません。

ジョーカーはある作品ではサイコパスとして、ある作品ではソシオパスとして描かれています。
特殊な性質の人間だからこそ、ジョーカーとなりえた。
そこをしっかりと理解しないと、感化されてジョーカーもどきの行動に走る人間がいないとも限りません。
実際、ダークナイトライジングではアメリカで惨劇が起こっています。
2012年、バットマンのジョーカーに影響を受けた男性がダークナイトライジングの上映中に銃乱射事件を起こし、12名が死亡しています。

今回の映画『ジョーカー』でもアメリカでは厳重な警戒をしているそうです。

ジョーカーはジョーカーにしかなれない。
ジョーカーになれるのはジョーカーただ1人。

私もあなたもなることは不可能なのです。
それがジョーカーなのですから。