2017/08/27

泣ける映画 『パーフェクトワールド』 by クリント・イーストウッド 映画レビュー【ネタバレあり】

クリント・イーストウッド監督作品で忘れてはならないのが、「パーフェクトワールド」です。
もう本当に大好きな映画で何回も見ていますが、何回見ても心に響きます。

主演はケビン・コスナー。1993年のアメリカ映画です。

刑務所から脱獄したブッチ・ヘインズと人質となった8歳の少年フィリップの物語。

フィリップの家はとても厳格で、家庭の信仰のためにハロウィンにも参加させてもらえずにいました。

刑務所を脱獄したブッチとテリーがたまたまフィリップの家に押し入り、フィリップは逃走の人質となってしまいます。

このフィリップ役の男の子がとっても愛らしく、この子無しではこんなに素晴らしい映画にはならなかったでしょう。

クリント・イーストウッドが演じるのは脱獄したブッチを追うレッド。
ブッチが犯罪者になってしまったのは、少なからずレッドの判断に原因があったのです。軽い犯罪を犯したブッチは保護観察相当だったにも関わらず、家に帰ればブッチの父親の暴力にさらされてしまうだろうというレッドの判断によって少年院に送られてしまい、そのことが一因でブッチは完全に犯罪に走ってしまったという過去があったのです。
ところが、当のブッチは父親の暴力など全く記憶にないようで、父親を偶像化し、会いたいと切に願っていました。そして、「父親」というものに対して、人一倍思い入れがあり、家族を大事にしない父親を許せないのです。

ブッチとテリーは人質のフィリップを乗せて車を走らせます。途中、食料などを買うため立ち寄った店の前の畑で、問題を起こしてばかりのテリーをブッチが射殺。ここからブッチとフィリップの二人旅が始まります。

「僕を殺すの?」尋ねるフィリップにブッチは「ノー。ノー。俺たちは友達だろ?」と答えます。「今乗っている車はタイムマシーンだ。前は未来、後ろは過去だ」「俺は船長、お前はナビゲーターだ」

ブッチは足がつくことを恐れ、別の車を物色します。ラジオと鍵がついている車を見つけ、その家の洗濯物の衣類も盗んで逃げようとするブッチ。
その家の老人が盗まれる車を阻止しようと窓にしがみついてきたので、ブッチが銃で撃とうとします。とっさにフィリップが老人の手を噛み、老人に手を離させます。
こうして、ブッチは車の強奪、逃走に成功し、老人は命をフィリップに救われたのでした。

ズボンを履いておらず、下着姿のフィリップに、ブッチは服を買ってあげると言って店に入ります。
店の外に停まっている盗難車に気付いた警察がブッチを待ちかまえ、店主はニュースで偶然に脱獄犯の顔を見てブッチに気付いてしまうのです。
この危機的な状況を脱するため、ブッチは警察の車に車をぶつけ、どうにかフィリップを車に乗せることに成功します。

その店を出る時、フィリップが服の中に隠し持っていたのは店で売っていたおばけのキャスパーの仮装衣装でした。
「盗んだのか?」という問いに「しからない?」と聞くフィリップ。
「いいか、盗みは悪いことだ。だが、何かが必要で、金がない時は『借りる』ってことにする。変則ルールってやつだ」ブッチはそう答えました。

キャスパーのハロウィンコスチュームに着替え、お面を付けたフィリップに地図の見方を教えるブッチ。ブッチとフィリップは次第に心が通じ合い、父と子のような、友達のような関係性になってきていたのです。
厳格すぎて自由のない家庭から解き放たれたフィリップはブッチとの旅を心から楽しんでいるようでした。

ブッチはアラスカの絵葉書をフィリップに見せる。その絵葉書はブッチの父親の唯一の手掛かり。ブッチはアラスカを目指して車を走らせます。

ブッチはフィリップに民家を訪ねさせ、「トリック・オア・トリート」と言えといいます。
このシーンはブッチが食料を調達するために、民家のおばさんを銃で脅して無理やり奪ったというのが本当のところなのですが、フィリップにとっては、宗教上の理由でやりたくても決して許されなかったハロウィンを経験するという喜びのシーンでもあるのです。

クリスマスも誕生日も祝ったことがない、ローラーコースターにも乗ったことがないというフィリップを車の屋根の上に座らせ走るブッチ。
抑圧された生活から解き放たれたフィリップは両手を挙げて大声を出し、思い切り楽しみます。

「試したいのに我慢していたことをその紙に書いてみろ」ブッチはフィリップに書かせます。その紙を読むと、ブッチは紙をポケットの中に。

ブッチとフィリップはとある民家へ親切にも招き入れられるのですが、子どもを殴りつける暴力的な祖父に腹を立てたブッチは逆上し、その祖父を射殺しようとします。それを許せなかったフィリップは銃を手に取り、ブッチへ銃口を向け、引き金をひきます。
銃弾はブッチの腹にあたり、フィリップは逃げ出します。

ブッチが逆上したのは、子どものころ父親から虐待を受けたことが原因となっているのですが、ブッチ本人は自分の父親を偶像化してしまっているため、父親からの暴力の記憶はないようです。ブッチの中では恋しい父親。優しい父親。そのイメージだけが父親像でした。
この場面はとても残酷ですが、ブッチの心の闇とフィリップの正義感を表現するために必要だったのでしょう。


フィリップは草むらに隠れ、ブッチは多量の出血を手で押さえながら追いかけます。
「俺は二人しか殺してない。ママを殴ったやつと、お前を殴ったやつだ」そう言って、あの老人を殺すつもりはなかったのだと言い訳しながら、フィリップを追いますが、フィリップは逃げ続けます。

木の上に逃げたフィリップ。その木の下に座り込んだブッチは父親からの手紙を読みます。「会いに来い」と書いてある父親の手紙を読み上げるブッチ。そして、倒れたブッチの元にフィリップが降りてきて、ごめんなさいと謝ります。
「誰かに撃たれるなら、お前でよかった。知らない誰かよりはな」

その時、警察が二人の元にやってきます。
早く逃げてというフィリップに「歩いていくのはダサい」と言って笑うブッチ。

フィリップの母親がやってきて、フィリップは帰りたいと言います。
ブッチは警官たちにキャンディと交換で子どもを返すと言うのです。それはフィリップが大好きなハロウィンの真似事。
そして、フィリップがやりたいと紙に書いたことを許し、やらせることをフィリップの母親に約束させ、フィリップを警察の方に返します。
『「トリック・オア・トリート」って言うんだぞ』と。「お化けのキャスパーがそっちへ行くぞ」と警察に言い、フィリップにキャスパーのマスクをかぶせ、歩かせるのです。

ブッチが反対方向へ歩きだしたその時、フィリップがブッチの方へ走って戻ってしまいます。
「ブッチは撃たれるの?」そう言ってブッチを抱きしめ、立ち上がらせ、手をつないで二人は歩き出します。それは、ブッチが撃たれないようにフィリップが守っているのでした。

最後に「お前にやるものがある」と言ってポケットの絵葉書を取り出そうとしたブッチを、銃を取り出そうとしたと勘違いしたFBIが銃で撃ってしまいます。
ブッチは倒れ、フィリップはブッチの手にある葉書を受け取り、母親に連れていかれます。

母親と共に歩くフィリップのキャスパー衣装の破れたところから、ブッチが入れたお札があたりにばらまかれていきました。

死にゆくブッチの傍らにはキャスパーのお面とお札。空からはヘリコプターに乗ったフィリップが葉書を握りしめて、ブッチを見ていました。

結局何も持たずに死んでいったブッチ。だが、その顔には微笑みが浮かんでいたのです。


題名のパーフェクトワールドとは何だったのか。
何がパーフェクトワールドなのかと考えさせられる映画です。

「父親」というもの。「父と子」というもの。
グラン・トリノもそうですが、クリント・イーストウッドが父という存在に強い意識を持って作品を作っているのを感じます。

男性にとってこの作品は、自分の父を思い、父である自分を考える良い機会になるのではないでしょうか。










































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