一家惨殺事件で生き残ったリビーと、犯人として刑務所に入っている兄のベン、それを取り巻く人々の物語です。
ダーク・プレイス
生き残った少女リビー
28年前、主人公のリビー・デイはたった8歳の少女だった。
リビーの両親は離婚しており、母のパティは親から譲り受けた農場を守りながら、息子のベンと3人の娘、デビー、ミシェル、リビーを育てていた。
リビーの父はろくでなしで、賭けで借金を作り、リビーの母に時々お金をたかりにやってくるだけ。
リビーの母は女手1つでがんばってきたが、農具やお金になるものはほとんど売り払い、自宅や農場も手放さなければならないほど困窮していたのだ。
ある日、この一家の母と娘二人が惨殺され、リビーは生き残り、兄のベンが犯人として逮捕されてしまう。
以後、ベンは刑務所の中。
リビーは保険金や同情する支援者からの寄付金、自伝の出版によって生活してきたが、事件から28年後、そのお金も尽きて、生活に困り、修理に出した車を引き取ることもできない状態だった。
そこに現れたのがライルだったのである。
殺人クラブ
ライルは『殺人クラブ』でリビーが話をしてくれれば700ドル支払うとオファーする。
指定した場所にリビーが行くと、そこは様々な団体が独自の活動をしている奇妙な場所だった。
ある者は殺人犯になりきり、あるグループは殺人現場の実況見分を模倣している。
帰ろうとするリビーを引き留めたライルは、この中のグループの一つが、自殺希望者をほう助し、殺害する連続殺人犯を特定したと言う。
ライルたちのグループもまた、真剣に事件の真相を追っているのだと言われ、ライルのクラブのメンバーたちの前にリビーは腰をおろすのだった。
ライルの『殺人クラブ』とは、過去の重大殺人事件を再検証し、解決することを目的としたクラブであり、リビーの一家惨殺事件は彼らにとって人気のある事件だった。
殺人クラブの見解によれば、事件の犯人は兄のベンではなく、他にいる。リビーが証言した「兄が殺すのを見た」というのは嘘である。無実のベンを助け出すには残り3週間のうちに証拠を見つけなくてはならないとのこと。
3週間たてば、経費の削減でベンの証拠書類が廃棄されてしまうのだという。そうなれば、もうベンを救う手立てはなくなってしまう。
協力を拒んだリビーだったが、修理の終わった車を引き取るためにライルから再びお金をもらい、その代わりに兄に会いに行くことを約束する。
ベンとの面会
獄中のベンに会い、兄のタトゥーに彫られた女性の名前を見たリビーは、何か心に引っかかるものを感じる。
ベンは、自分を犯人だと証言した妹のリビーを恨んではいないと言う。
兄のベンはリビーのイメージとは違う優しい人間だった。
リビーが訪ねてきてくれただけで嬉しいとベンは微笑み、優しくリビーを見つめる。
「兄さんが犯人ね?」と聞くリビーに、「No, I did not」とベンは答えた。
「誰も殺してはいない」
そういうベンに、リビーは「兄さんは嘘つきだ」と言い放ち、その場を立ち去った。
過去
28年前、ベンは悪魔崇拝に心を奪われていた。ノートに悪魔を崇拝する絵と文字を書き、壁に悪魔の絵を貼り、同じく悪魔崇拝をする原住民のトレイと、ベンの子を身ごもっているというディオンドラの3人でドラッグをやり、生贄として牛を殺したりしていた。
ディオンドラはどちらかというとトレイに従っているように見える。本当にベンを愛しているのか、お腹の子はベンの子なのかはわからない。
このお腹の子が映画のラスト近くで明らかになる。果たして子どもの父親はトレイなのか、ベンなのか。
ベンはクリシーという11歳の少女へのイタズラの容疑をかけられていた。
ベンの母がベンの部屋で子ども服を見つけ、ベンの小児性愛を疑い、その子供服を暖炉で燃やしてしまう。
ベンの幼女へのイタズラに関して、多大な弁護費用が必要だった。
ただでさえ困窮しているリビー一家にとって、これは大きな痛手である。
売れるものは売ってしまっていて、もうお金はほとんどない状態なのだ。
事件の真相
リビーがベンにイタズラされたとされていたクリシーに会いに行く。
クリシーはその場では正直に話さなかったものの、その後、リビーを訪ね、真相を教えてくれる。
ベンに好意を寄せていたクリシーはベンにイタズラされたと妄想を友だちに話したのだった。ベンはイタズラなどしてはいなかった。
母のパティがベンの部屋で見つけた子供服は、ベンがディオンドラのお腹の子のために購入していたベビー服だったのである。
お金に困っていたリビーの母パティは、保険金に唯一の救いを求め、ある男と契約してしまう。その男こそ、この事件の真犯人であり、自殺者をほう助して殺人を繰り返していたカルバン。例の『殺人クラブ』が見つけ出した連続殺人犯だったのである。
一家惨殺事件の日、実はもう一つ事件が起こっていた。ベンはディオンドラと一緒にこの街を出て二人で暮らすことを決断し、お金と荷物を取りに家に二人で戻ってきていたのだった。
それを見つけたベンの妹のミシェルを口封じのためにディオンドラが首を絞めて殺してしまった。
一方、同じ時、同じ家の中で、殺人犯のカルバンがリビーの母パティをナイフで刺し、銃で撃ち殺し、ベンのもう一人の妹であり、リビーの姉であるデビーをも撃ち殺してしまう。
リビーは家を逃げ出し、小屋に隠れ、難を逃れたのであった。
つまり、一家3人のうち2人をカルバンが殺害、1人をディオンドラが殺害。ベンは誰も殺してはいなかったのだ。
リビーはディオンドラが現在名前を変え、ポリーとして生活していることをつきとめ、兄のタトゥが『ポリー』だったことに気付く。
ポリーの家を訪ねたリビーは、ポリーの産んだ娘クリスタルに会う。
自分によく似た少女だった。つまり、ディオンドラのお腹の子どもはベンの子どもだったのだ。ベンはディオンドラを守り、何も言わず刑務所に入ったのだった。
ポリーの家の洗面所で、リビーは母が大事にしていた十字架のネックレスを見つけてしまう。このネックレスがここにあるということは、ディオンドラがあの日、殺人事件の現場にいたことを示す。
リビーは母のネックレスを靴に隠し、洗面所を出るが、これに気付いたクリスタルに後ろから殴られ、銃で追われることになる。
迎えに来たライルに助けられるリビー。
事件の真相は明らかになり、ベンは釈放された。
今までキャップをかぶり、男のような服装をして暮らしていたリビーが、事件の真相が明らかになった後、帽子を脱ぎ、淡いピンクの服を着て、事件現場となった昔の我が家を訪れる姿が映し出される。
暗い場所にいたリビーが、明るい場所へ出て一歩踏み出すことを象徴している、暗い映画の中で救いとなるラストシーンだった。
『有益な人生を送れとママは言った。普通でいい。普通の人生で。今、やっと始まった』
車を運転しながら薄く微笑むリビーの姿で映画は終わる。
感想
全体的に暗い映画ではあるけれど、嫌いではない。
真犯人が二人いたというのは、やや不満が残るし、ディオンドラとその娘がリビーを殺そうとするところは腑に落ちない。
殺人クラブという発想は面白いと思うし、リビーを暗闇の中から救い出してくれるきっかけを与えているので、良いアクセントになっているだけに、もう少し、その活躍の場があっても良かったような気がする。
すごく良い作品というわけではないけれど、後味は悪くはないので、見ても損はない映画なのではないだろうか。
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