嵐で遭難した船上で1か月半もの間生き延び、救助された女性タミと、その恋人リチャードの短くはかない恋の物語でもあります。
あらすじ
1983年タヒチ。
タミはサンディエゴからこの島にやってきた。
YCPマリーンで働きながらタヒチで生活していたタミは、イギリス人のリチャードと知り合う。
造船所で働いている間に自分の船を造ったリチャードは、その船で世界中を旅していた。
二人は惹かれあい、恋に落ちる。
市場で老夫婦に声をかけられるリチャード。
その老夫婦はピーターとクリスティーン。クリスティーンの母が具合が良くないためロンドンに戻ることになったという。
リチャードは老夫婦からハザナ号という船をカリフォルニアに運んでほしいと依頼される。
運んだ報酬は1万ドル、おまけに帰りの飛行機はファーストクラスという破格の申し出に、リチャードは帰りのファーストクラスを二人分にすることを条件提示し、夫妻はそれを承諾。交渉成立となった。
リチャードの船で世界を旅する夢を抱いていたタミだったが、ハザナ号をサンディエゴに運ぶことを渋々ながら了承した。
タミはサンディエゴに帰ることを嫌がっていたのだ。
久しぶりに実家に帰ることになりそうなタミは母親に手紙を書く。
タミは船上でリチャードからプロポーズされ、二人は婚約者となった。
突然、風が強くなる。
クラス4の竜巻が近づいていた。嵐だ。
船はおもちゃのように荒れた海に揺さぶられ、二人は必死で回避しようと試みるが、リチャードは海に投げ出され、タミは船内に打ち付けられ気を失ってしまう。
タミが気づいた時、船にリチャードの姿はない。
叫ぶタミ。
タミは壊れた船を必死に直そうとする。
ふと海を見ると、小舟につかまって浮いているリチャードを発見する。
タミは縄を自分に結び付けてから海に飛び込み、リチャードを船に引き上げた。
リチャードは足を粉砕骨折し、あばらも折れた状態で重症だった。
漂流2日目
動けないリチャードの代わりに、タミが船の位置を調べる。
だが、船のいる場所は飛行機の飛行経路でもなく、船の航路でもない。
助けがくることを期待できない絶望的状況だった。
ただ、運が良かったのは、船の水が使えたことだった。
食料もある。
タミはピーナツバターをリチャードと共に舐めた。
漂流5日目
ハワイまで800マイル以上。思った方角に船が動かない。
タミは海に潜って、スクリューに絡まった船の帆を取ろうと試みる。
漂流10日目
水が切れそうだった。
魚の缶詰とスパムと激辛ソース。食料はわずかしか残っていなかった。
リチャードは生き延びるために、タミに魚を獲るように促す。
ベジタリアンのタミは魚を殺すことはできないと言うが、生きるために仕方なく海に潜り、モリで魚を突こうとする。
だが、魚を獲ることはできなかった。
雨が降り出す。恵みの雨だ。
水を溜められる容器を船いっぱいに並べ、雨水を溜めるタミ。
漂流18日目
ギターを弾きながらタミは歌っていた。
「僕と出会ったせいで君がこんな目に」と言うリチャードに、「2人の思い出がある。何よりも貴重だわ」とタミ。
漂流29日目
大型船が接近。必死で気づいてもらおうとするタミだったが、船は忽然と消えてしまう。
幻覚を見ているの?ここで死ぬの?
タミは泣き叫ぶ。
「極度の疲労、脱水症状、せん妄状態。だが、まだ死んではいない」と言うリチャード。
「ハワイに着いたら起こして」そう言って目を閉じたリチャード。
タミは「あとわずか690マイルよ」とリチャードに言うのだった。
漂流33日目
リチャードはかなり衰弱。
再び嵐が近づく。が、ただのスコールだった。
リチャードは熱を出していた。
【ネタバレ】
ここからはネタバレです。
リチャードの姿は船上にない。
元々リチャードはいなかった。船から投げ出されたまま、行方不明であり、リチャードを引き上げて看病していたというのはタミの幻覚だったのだ。
そのことにやっと気づいたタミ。
船に一羽の鳥が飛んでくる。
陸が近いことに気づいたタミが双眼鏡を覗くと、そこには陸地が。
近くに船を見つけ、救難信号を撃つタミ。
タミはラキーノ号に助けられ、もらったリンゴにかじりついた。
救助された後、タミはタヒチに戻る。
リチャードが残したマヤルガ号に入ると、船内には二人の思い出の写真がたくさん貼り付けられていた。
リチャードは海に投げ出され33歳で死亡。タミは41日間の遭難の末、救助された。タミはその時24歳だった。
「リチャードが私を生かした」とタミは語っている。
そして、タミは今日も航行を続けているという。
【感想】
実話を元にした映画ならではのリアリティがあり、見ごたえのある映画になっている。
こんなひどい目にあっても、航行を続けているタミはすごい。というより、どんな神経をしているんだ?とやや呆れるほど。
普通なら、二度と船には乗りたくないと思うに違いない。
タミとリチャードの恋人としての期間はとても短かったけれども、大好きな旅を2人で楽しみ、同じ夢を共有して、遭難に遭うまではとても濃密で素晴らしい時間を過ごしたのだと思う。
リチャードが生きているという幻覚がなかったら、タミの神経も持たなかったはず。
たった一人で太平洋の真ん中で、助かるかもわからない日々を過ごすには、この幻覚こそが助けであったのだろう。
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