人間の思考には大きく分けて二つのタイプがあるのをご存知ですか?
1つは「自分のせいじゃないから」「これは○○が悪いから。〇〇のせいだから」と考え、責任を自分に感じにくいタイプ。
そしてもう一つは「自分のせいじゃないかな」「もしかしたら、自分が悪かったのかな」「みんな私のことどう思っているんだろう?」自分を責め、反省し、周囲からの自分に対する印象を気にしてしまうタイプ。主語が常に「I」(私)で考えてしまうタイプです。
この二つのタイプを比較すると、心の病に陥りやすいのは圧倒的に後者。自分を責めてしまう、自分に責任を感じてしまう、人が自分のことをどう思っているか必要以上に気にしてしまうタイプ、なのです。
人のせいにするのは道徳的にはあまり良くないことですが、心の病には陥りにくいので、メンタルヘルスという土俵で考えれば勝者です。
自分を責めないので、自分の精神を自分でいじめることが少ないのです。
自分を責めてしまうタイプは、何かトラブルがあると、そのことが頭から離れにくく、常に考えてしまう、気にしてしまうため、どんどん精神的に自分を痛めつけてしまいます。
自分のせいでもなんでもないのに、他人から見たら些細な事で、気にすることなんかまるでない事なのに。そんな小さなことをずっと考えてしまうため、自分の心を追い詰めてしまうのです。それが行き過ぎると、ついには心の病を発症してしまうことにもなりかねません。
1. 人のせいにしていい
自分を責めるタイプは人のせいにすることが苦手です。そうですよね?
人のせいにする人間のことを「ダメな人間」だと思っています。違いますか?
反省できない奴は成長しない。反省しなければ、また同じことを繰り返す。
そうですよね。その通りだと思います。
そう考えているからこそ、自分を責め、責任を負おうとするのですよね。立派です。
人間としては正当で理想的です。
でも、人のせいにするタイプの人間は責任を自己に負わせないので、心が追い詰められることがなく、ストレスを体内にため込みにくい特徴があります。
だから心の病になりにくい性質を持っています。
立派な人間は心の病気になりやすく、責任を負わないダメ人間は心の病気になりにくい。世の中はなんて理不尽なのでしょう。
さぁ、ここで一つ目のトレーニングです。
ストレスが自分の心をむしばんでいると感じたら、「ダメ人間」の模倣をするトレーニングをするのが効果的なのです。
とっても難しいことですが、「私のせいじゃない」「これは○○が悪いのだ」と無理にでも自分に言い聞かせましょう。
たとえ自分が悪くて事が起こったとしても、「私だけの責任ではないし」と無理やりにでも考えましょう。
責任を放棄するのです。責任を負わないのです。
社会的に責任を負わないのではなく、自分の心に言い聞かせるのです。
実際に社会の中で完全に責任を負わないなんてことはしてはいけません。自分が悪いことをしたら、謝ることも必要ですし、きちんと後処理をしなくてはなりません。
でも、自分の心には嘘をついても良いので、とにかく「私のせいじゃないし」と何度も頭の中で繰り返しましょう。
2. 長い時間考えない
自分を責めるタイプは「あれ大丈夫かな」「あれ、どうしよう」「あの時、ああすれば良かったかな」などと、心配してもどうにもならないようなことを延々と長時間考え続けてしまいます。
気になってしまって、何度も思い出して、悩むのです。
悩んだってどうにもできないことでも、何度も、長時間、考え続けてしまいます。
悩んでいるその時間、あなたは自分の心を傷つけているのです。
ストレスという矢で。
だから、心配でも、気がかりでも、とにかくそのことを考えてもどうしようもないことは今すぐ考えるのをやめましょう。
気になってしまうから、すぐにはやめられないし、何度も思い返してしまうでしょう。でも、努力するのです。考えない努力。
考えそうになったら、違うことを考えるように努めましょう。できれば楽しいこと。面白いこと。
お笑いとかを見るのもいいですし、自分の趣味のものを見て頭を切り替えるのもいいですね。
とにかく嫌なこと、心配なことを考える時間は、あなたを苦しめる毒以外の何ものでもありません。
今すぐ、頭を切り替えて、忘れる努力をしてください。
3. 「まぁ、いいか」は魔法の言葉
失敗してしまったり、もっとうまくできたのではないかと反省したり、あれどうなってるかなと気になったり、どうしても負の方向に物事を考えてしまいそうになる時、魔法の言葉を唱えましょう。
「ま、いいか」
その言葉を唱えれば、責任を放棄できますし、忘れることができます。考えすぎないですむのです。
心配になったら「でも、まぁいいか」、どうしようと困ったら「まぁ、なんとかなるさ」口に出してもいいし、心の中で唱えてもかまいません。
本当に、まぁいいかと思っていなくても、無理にでも唱えてみて下さい。
気持ちがすっと楽になります。
4. 世界を三つ以上持つ
自分の世界を三つ以上持ちましょう。
ほとんどの人は世界を二つは持っています。それは自分の家庭と学校の二つだったり、家庭と会社の二つだったり。
でも、その二つだけだと、逃げ場が少なすぎるのです。
趣味の集まり。学校や会社以外の友だち。習い事。なんでもいいから、家と学校や会社以外の第三の世界を作りましょう。
いじめにあっている子どもにも、ぜひこの第三の世界を与えてあげたいものです。
逃げ場が人間には必要なのです。
愚痴を言える場所だったり、全然違うことを楽しめる場所だったり、そういう逃げ場を持つと、マイナスの思考がずっと頭から離れない状況を改善できます。
オタク活動なんて最高に良いですね。自分の好きな世界を持つことは、自分を助けることになるのです。
自宅と会社を往復するだけの人生だったら、今すぐ何かもう一つの自分の居場所を探してください。
三つ以上の世界を持っていれば、嫌なことがあっても、逃げこむ場所ができます。
5. 体を動かそう
体を動かすこと。それがそんなに重要だろうか?と疑問に思われるかもしれません。ですが、体と心はつながっているのです。
散歩やウォーキングなどで体を動かすことはとてもいいことです。特に、外に出かけることが、考えすぎてしまうタイプの人には有効です。
体を動かすことが、軽度のうつ病の人にも有効なことが臨床的に証明されているのです。
体を動かしている間、マイナスの思考を追いやることができます。
外に出て外気に触れることで、嫌なことからしばし逃れることができます。
家にこもってじっとしているということは、知らず知らずのうちに負の考えに囚われ、マイナス思考になってしまう可能性が高いので、気分が沈んでいる時こそ、「えいっ」と腰を上げて体を動かしましょう。
実体験から、そして心理学から学んだこと
私自身が10年ほど前にメニエール病を発症し、1年以上通院、投薬治療などを続けましたが全く良くならなかった経験を持ちます。
病院に通っても良くならなかった病状が、あることをきっかけとして1か月もたたないうちに症状が無くなり、回復してしまったのです。
メニエール病は難聴、めまい、耳鳴りを主な症状とする病気ですが、心因性のストレスが原因で発症するといわれています。
発症当時、私の周囲で様々な不幸な出来事が起こっていました。親の死、子どもに大きな問題が発生、そして、私自身、子宮筋腫のため子宮全摘出手術を受け入院。数か月の間にいくつもの大きな問題が起こったため、精神が不安定になってしまったのでしょう。
バスに乗って外を見つめているだけで涙が出てきたこともあります。「絶望」という言葉の意味を初めて実感したのもその時でした。
世の中が真っ暗で、先が見えない。
暗い井戸の底に突き落とされ、空には月さえ見えない。
そんな精神状態でした。
ある時、左耳にボーっという風が吹き込んでくるような感覚に襲われました。
「なんだろう?左から風がくるな」
身体の向きを変えても、いる場所を変えても、その風は吹きやみません。
数日、それが難聴を伴う耳鳴りだということに気付きませんでした。
ようやく異常に気付いて病院に行った時、「突発性難聴」と診断を下されました。「絶対安静にして毎日点滴を受けなくてはならない」と医師は言いましたが、仕事の関係ですぐに休むことができませんでした。
「今、絶対安静にしないと、一生治らないよ」と医師に言われました。
突発性難聴は、その医師の言う通り、発症直後が勝負の病気です。すぐに絶対安静にして治療しないと、聴力の回復は望めず、一生難聴となります。
ところが、それから数週間後、とある別の病院で検査してもらったところ、突発性難聴ではなく「メニエール病」だと診断されたのです。
メニエール病は突発性難聴とよく似ていますが、発症後時間が経っていても回復の見込みのある病気です。
ガス治療に通い、点滴を受け、毎日処方された薬を飲みました。
ところが、1年以上病院に通い続けても、全く聴力が回復しません。
そのころ、私の聴力は低音難聴といって、低音が特に聞こえにくく、右耳と左耳で聞こえる音の高さが全く違ってしまっていたのです。
音楽はぐちゃぐちゃの音階に聞こえました。音楽が音楽として聞こえてこない。不協和音に聞こえてしまうのです。
大好きな音楽が全く楽しめず、不快な音にしか聞こえないことに、絶望的な気分になりました。
おまけに耳鳴りがひどく、左耳でずっと低音の耳鳴りが響いています。
耳鳴りが怖いのは、逃れることが決してできないこと。
どこに行ってもついてくる。起きていても寝ようとしてもずっと聞こえている。この音から逃げる方法はたった一つしかないのです。それは死ぬことでした。
今考えても本当に恐ろしく、二度とあんな思いはしたくないと思います。
ストレスを原因として身体に症状があらわれてしまう病気は他にもたくさんあります。
ストレスが原因なら、ストレスを排除すればよい。誰でもそう考えますが、そう単純な作業ではありません。
そもそもストレスを感じる感じ方が人によって大きな差があるのです。
自分を責めてしまいがちなタイプは、ストレスのダメージを大きく受けやすいタイプでもあるのです。
メニエール病に苦しんでいる時、私は心理学が勉強したくて、大学の心理学科で学んでいました。子どもが中学受験を終え、自分の時間が持てるようになったので、何か勉強したくて、大学に再度通うことにしたのです。
18歳の時に入学した大学で専攻したのは外国語でした。社会人になり、母になり、アラフォーになった時、改めて大学で勉強してみたいと思ったのは心理学だったのです。
心理学を学んでいくうちに、あるテキストの1章に強烈なインパクトを受けました。
そこに書かれていたのが、まさに「I」(私)を主語にして考えてしまうタイプはメンタル的な病気になりやすいという研究報告だったのです。
そこには、どうすれば良いかも書かれていました。
「自分のせいじゃない」「〇〇のせいだから、仕方ない」と、真逆の思考をトレーニングするというものです。
人のせいにすることができず、自分を責めてしまうタイプが思考を転換して人のせいにするのはとても難しいことです。
無理やり、考え方を変えていかなくてはなりません。
初めは難しくて、なかなかできませんでしたが、無理やり自分の考え方を変えていくトレーニングを繰り返したところ、たった1か月足らずでメニエール病の症状が全く無くなってしまったのです。
それが、この「心を守る5つのポイント」というわけなのです。
私が心理学で学んだことをベースに、5つのポイントとしてまとめたものです。
この5つ、全てが実際に私を救ってくれたメンタルトレーニングなのです。
ストレスで自分を痛めつけている人がいたら、ぜひ読んで実践してほしい。
実際に私が学んで、自分をトレーニングして、回復したのですから。
悩んでいる人がいたら、耳を貸してほしいし、一度でいいから試してほしいと思います。
~自分を責めて傷つけ続けている人へ~