2018/03/26

映画レビュー『シェイプ・オブ・ウォーター THE SHAPE OF WATER』あらすじ【ネタバレあり】

第90回アカデミー賞で作品賞など4部門を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』は2017年のギレルモ・デル・トロ監督の作品である。

シェイプ・オブ・ウォーター


幼いころに母親からの虐待により声帯を切られ、発話することができなくなった女性イライザと、アマゾンの奥地で神としてあがめられていたが研究のため航空宇宙研究センターに連れてこられた半魚人とのラブストーリー。


イライザは、アパートの隣人であるゲイのジャイルズと、家族にも似た関係を保ちながら日々暮らしていた。
ジャイルズとは時々出かけたり、食事をしたり、一緒にテレビを見たり、なんでも話ができる親友であった。


イライザは毎日ゆで卵を作り、夜勤の仕事に出かけていく。
仕事先の航空宇宙研究センターでは清掃員として働き、同僚のゼルダと共に退屈な仕事をこなしている。

ある時、研究センターに半魚人が運ばれてくる。アマゾンの奥地で現地人から神として崇拝されていた半魚人だったが、研究のため鉄の鎖で首をつながれ、研究センターの水槽に閉じ込められていた。

軍人のストリックランドは電撃棒で半魚人を虐待し、自分の指を食いちぎった半魚人を殺そうとする。半魚人を殺して解剖することを強く進言し、上官にこれを認めさせてしまう。


半魚人と出会ったイライザはゆで卵を渡し、「エッグ」という手話を教える。
レコードを持ち込み音楽をかけ、「ミュージック」という手話も教え、二人は少しずつ近づいていく。

声を出して話をすることができないイライザを半魚人はそのまま受け入れてくれる。自分自身の本当の姿だけを見てくれる。
言葉がなくても通じ合える二人は次第にお互いを必要とし、恋に落ちていった。


ストリックランドが半魚人を殺そうとしていることを知ったイライザは、ジャイルズを説得して半魚人を助け出す計画を立てる。
ソ連のスパイだったホフステトラーの協力を得て、半魚人を連れ出したイライザは自分の部屋のバスタブに半魚人をかくまう。


そして、二人は結ばれた。

部屋を水で満たし、愛し合う二人。

ホフステトラーから「清掃員のところにいる」ことを聞き出したストリックランドは、イライザの親友ゼルダの夫を脅し、半魚人がイライザの部屋にいることを突き止めた。
ゼルダから電話を受けたイライザは半魚人を桟橋から海へ逃がすため、桟橋に急ぐ。






「あなた、私、一緒」という半魚人に対して首をふるイライザ。一緒に行くことはできないと別れを惜しむ二人と見守る親友のジャイルズの元に、あのストリックランドがやってくる。
ストリックランドは拳銃で半魚人を撃ち、イライザにも発砲する。



倒れる二人。


だが、半魚人には傷を治す力があり、撃たれた傷はみるみるうちに回復した。
半魚人はストリックランドを殺害し、撃たれたイライザを抱きかかえて水中に飛び込む。
そして、水中で半魚人はイライザにキスをし、優しく首をなでた。

イライザは息を吹き返し、二人は水の中で幸せに暮らしていくのだった。



おとぎ話のようなラブストーリー


美しくもなく、裕福でもなく、普通の人のように話しをすることもできないイライザと、研究のために捕らわれた異形の生物との恋愛物語。
それがシェイプ・オブ・ウォーターの大きな柱だが、この柱の周りには何人もの個性的な人物や、エピソード、監督の意図が散りばめられている。


☆人魚姫


「話ができない」ことや「海」というキーワードから「人魚姫」のお話が頭をよぎる。

イライザにとって半魚人は待ち続けていた王子であったのだろう。
初めは醜く見えた半魚人だが、引き締まったスタイルや治癒させる能力を持つなど、徐々に人間以上の存在に思えてくる。

☆緑


そして、この映画全体に散りばめられた「緑」という存在。
緑のケーキ、緑の車、緑の制服、緑のゼリー・・・・
そこかしこに緑が強調されたシーンがある。

この「緑」に監督が何かを意図しているのは確かだ。
しかし、その意味は見る者によって受け取り方が違うだろう。


☆親友二人


イライザの親友であるゼルダとジャイルズ。

ジャイルズはゲイ。そしてハゲに悩んでいる。前職はクビになり、失業中。今は絵を描いて細々と暮らしている。

ゼルダは黒人女性。夫は腰が痛いといって何もしない。ゼルダは不満を抱えて暮らしている。

この物語の中に美しい人は一人も登場しないし、幸せな人間も登場しない。

唯一、ラストでイライザと半魚人が幸せになるのだが、それもこの人間の世界ではなく海の中のお話に過ぎない。そして、それも不確かな想像でしかない。


☆完全な悪役と不完全な援助者


ストリックランドは完全な悪役だ。本当に嫌な男で、半魚人に噛まれた指が腐っていくことが小気味よくさえ思えるほどである。

こういう胸糞悪い悪役の存在こそが物語の影となり、主人公たちを輝かせるものなのだろう。

イライザと半魚人に力を貸したホフステトラーだが、最終的にはストリックランドに半魚人の居場所をしゃべってしまう。
そのためにイライザたちが窮地に立たされ、追い詰められるのだが、この映画においてホフステトラーの存在はポイントポイントで重要で、なくてはならない存在であったといえる。


美しくないけれど、すごく美しい物語



美しい人は誰もいないし、エピソードのどれも美しくはない。
暗くて汚い場面が多いし、華やかなシーンはほぼない。

イライザと半魚人のラブシーンも決して美しくはない。

でも、最後にはすべてが美しく見えてしまう。

それがこの映画の最大の魔力だと思う。

心が揺さぶられ、水の中の二人が美しく輝いて見える。

この映画は今まで見た中でも特に大好きな映画になったし、後々に残る名作の1つになるだろうと思う。

最高に美しい映画。それが「シェイプ・オブ・ウォーター」なのである。

シェイプ・オブ・ウォーター










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